最新号へ ホームへ



まちづくり情報 8号 ページ2
ページ1へ | ページ3へ
<支援メニューで考えるまちづくり>

中心市街地の活性化は、個店単独では難しい情勢であり、官民一体となって推進するのが望ましいと思われます。関係各省庁では、平成12年に中心市街地活性化推進室を設置し、市民の手による街の活性化を支援しています。  中心市街地活性化法では、活性化策としての特別な予算は組み込んでいませんが、各省庁で既に準備されている数多くの事業、補助・融資などの施策(支援メニュー)をうまく利用し、活性化につなげていくことを想定しています。支援メニューはイエローキャップで把握しているだけでも省庁合計で100策以上あり、盛り込まれている予算の総額は数千億円から一兆円ともいわれています。これらをうまく利用できれば、かなり効率的に街の活性化が実現できそうです。今回はこの支援メニューを取り上げてみました。

1.計画づくりとマネージメント  
 各省庁の支援メニューを有利に利用するためには、国から計画的な街づくりであると認められる必要があるので、市は活性化のための基本計画を策定し、国に提出、承認を受けます。十和田市では、平成12年度にこの手続きは終っています。次にこの基本計画に基づいて、計画的にまちづくりを進めるための団体を設立します。これがまちづくり機関、T(タウン)M(マネージメント)O(機関)、すなわちTMOです。TMOは地元の住民・商業者などのコンセンサスを得ながら、市の基本計画に根差した事業構想を作り、その構想に合致した民間事業を総合的に支援していきます。いわばTMOはまちづくりの総指揮官ですから、中心市街地活性化の成否はこのTMOの実働能力にかかっています。  十和田市の場合は、商工会議所が主体となり、民間によるまちづくりのための事業企画を調整するTMOになりますが、目下設立準備段階なので、TMO推進協議会が窓口になっています。

2.ソフト事業による活性化

 空き店舗対策への支援策である<商店街等活性化事業>により、イベントや展示会等の事業に国と県から2/3の補助を得られます。この他、<中心市街地商業活性化推進事業>の利用により、<テナントミックス管理事業>などに90%までの補助を得ることも可能です。

3.施設設備による活性化

 例えば、アーケード、ポケットパーク、休憩所の整備、コミュニティホールの整備、公共施設を組み込んだテナントミックスやビル建造物の設置などは、人が集まったり、住む人を増やしたりするのには効果的な施設ですが、莫大な事業費がかかりますし、土地所有者の権利関係など住民・商業者の同意を得なければなりません。TMOでは総合的な調整をして、数々の支援策を利用できるように進めます。例えば、TMO構想の下に商店街組合などがテナントミックス店舗、駐車場、コミュニティホールなどの設置をする事業に対して、<リノベーション補助金>は1/3〜1/4の補助を、<中小企業総合事業団高度化融資>は無利子融資を、そして、税制上の優遇や銀行からの借入時の信用保証の特例など数々の支援策が用意されています。


4.中心市街地活性化のイメージ

 そこで、中心市街地の街づくりをイメージしながら、どんなことにどのような支援メニューを利用できるのか、また、そのなかで重要となるTMOの役割について考えてみました。  中央の絵には、住居、商店街、公共施設、集配センター、公園、駐車場など、中心市街地として必要な施設を配置してみました。  この図の中で、例えば、商店の裏側部分で、現状では店舗に利用できない地域をうまく整備改善して、集合住宅やテナントミックス・駐車場などに利用できるようにするために、住民・商業者のコンセンサスに基づいた事業構想を作成する役割をTMOが担います。これにより、事業を実施しようとする事業者達は、例えば、<産業基盤整備基金>による債務保証や<街なか再生型市街地再開発・土地区画整理事業>、<街並み・まちづくり総合支援事業>、<商店街等活性化事業>など多くの市街地整備改善関連支援メニューからの補助を効率的に受けることができます。住宅施設を建設する場合にはよく知られている<住宅金融公庫の融資制度>だけでなく、種々の施策から建設費や家賃対策の補助(1/3〜2/3)を得ることができます。なかでも高齢者向け住宅に関しては特に優遇されるようです。
 また、<中心市街地整備推進機構>による用地取得に対しては各種税金が軽減されますので、関連事業の円滑化に向けた用地の先行取得や利害関係の調整などに利用できます。  以上はごく一部にしか過ぎませんが、TMO構想の下に助言を得ながら各種事業を展開していくことにより多くの支援メニューを利用してより効率的に事業を進められることをご理解頂けたと思います。
 イエローキャップでは、各省庁で提示している支援メニューを一覧できるように準備してありますので、ご興味を持たれた方はいつでも五丁目のイエローキャップ事務局へおいでいただければと思います。また、次号以降でももう少し具体的な支援メニューの利用例をご紹介していきたいと思います。
 
  先日のTMO合同会議で商工会議所より大手ショッピングセンタ−ジャスコから十和田市の中心市街地活性化に協力したいとの申し出があったことが報告されました。  かつては大型店の参入を巡って一斉休業のストライキをやったこともありましたが、現在はTMO構想づくりのために住民のコンセンサスを得る作業を進めているので、その中で、ジャスコの進出を検討していかなければならないと考えられます。  大型ショッピングセンターが中心市街地にできるとなれば、確かに当面は街を訪れる人達も増え、にぎやかになることも期待できます。  しかし、このような話題が浮上する中でも注意しなければならないことは、「街づくりは市民の手で」という基本計画の主旨は「他力本願では街づくりは成功しない」という意味でもあることを強く念頭におき、大型店も街づくりの効果的な一策にすぎないと考えることとし、街の定住人口を増やすことや公共施設の憩いの場所づくりなど、住む人も訪れる人も利用しやすい街づくりをやはり私達住民・商業者が心がけることが大切と思います。