婦人像(船越 保武 作) 制作 昭和61年

 作者船越保武は、カトリックの洗礼を受け、宗教的な作品が多い人ですが、大理石彫刻家としても知られています。この婦人像の肌理(きめ)の詰め(なめらかさ)は、大理石彫刻をこなした人でないと出せないものなのです。
 高村光太郎は、彫刻は「視覚で経験する触覚だ」と言っています。ところが、それはモデリング(肌の肉付けをする時)のタッチの荒さがある作品だといいのですが、この作品のように、どこまでも柔らかく、なめらかですと、じかに触ってみる方が、作品の「品」がよくわかります。人間は、その重さに耐えぬほどの着衣(社会的存在としてのポーズも含めて、いろいろと外面を装い、着込んで)身を包んでいますが、そのすべてを取り去っても、その人の何かたるを知ることはできません。
 その内奥にあるあるものをさぐりあてようとするのが、彫刻家だとも言えます。
 このモデルの何をさぐり出そうとしたのかは、見る人によって変わってくるのでしょう。人間はみんな違ったモノを着込んでいるのですから。清楚な無言の愛を想う人もあるでしょうし、田園の幸福に忘我の時を感ずる人もあるでしょう。
 安らぎの心の一時かもしれません。皆さんの手(触覚)で感じ取ってみて下さい。
 
「作品の解説」(解説文は、市民文化センター元館長 今純一郎氏)

 

作者略歴

船越 保武(ふなこし やすたけ)
 
(明治45年)岩手県二戸郡に生まれる

(昭和 4年)「ロダンの言葉・高村光太郎訳」を恥読し、
                  彫刻家を志す

(昭和14年)東京美術学校彫刻科卒業

(昭和37年)長崎市西坂公園に「長崎26殉教者記念像」を制作。
         第5回高村光太郎賞受賞
 
(昭和43年)田沢湖に「たつこ像」制作
 
(昭和47年)第3回中原悌次郎賞受賞作「原の城」を
                  ローマ法王庁に寄贈
 
(昭和48年)ローマ法王庁から勲章受賞(大聖グレゴリオ騎士団長)
 
(昭和53年)芸術選奨文部大臣賞受賞
 
(昭和61年)札幌芸術の森美術館に「杏」が設置

資料提供 十和田市